【クマ出没注意】冬眠は?新潟県でも確認される”穴持たず”のクマたち

【クマ出没注意】冬眠は?新潟県でも確認される”穴持たず”のクマたち

2025年1月18日

新潟県のツキノワグマ

 新潟で生活していると誰もが一度は、クマの目撃情報やニュース速報を目にしたことがあるでしょう。その発生源は、上越・中越・下越と枚挙にいとまがないほどです。一部の地域を除き、大自然あふれる新潟県は、9割の自治体にクマが生息しているので、見ないほうがおかしいとも言えます。また、クマが餌や住処を求め、山伝いに沿岸部や河川を移動し、なぜここに?という所での目撃情報も寄せられています。

 新潟県の発表するデータによれば、2017年から2024年まで県全体で8,482件、長岡市で最多の1,128件、次いで南魚沼市が844件、魚沼市が702件となっています。しかしながら、山間部のない新潟市で16件、田上町で4件、聖籠町で3件も目撃されているのは、クマなど野生動物に馴染みの薄い方からすれば、信じられない事実でしょう。

 熊出没マップ(外部サイト)

 この他にも、目撃や報告に至っていないだけで、クマや鹿、イノシシ、サル、ハクビシン、イタチ、キツネ、タヌキなど、数多くの野生動物が「日常的に顔を出してくれる」。そんな素晴らしい大自然そのものが新潟県の大きな魅力の一つでもあります。それとは裏腹に、居た堪れない人身被害や農業被害も多く発生しているの現状ですが、「この地球に共に生きるもの」として、野生動物の存在や生態を少しでも理解することが、人身被害や農業被害を最小限に防ぐきっかけになると思います。

ツキノワグマの目撃回数が年々増加する理由

 全国的にクマの目撃回数が増加していますが、そもそも日本には、クマが2種類いることをご存じでしょうか。本州にはツキノワグマ、北海道にはヒグマが生息しています。2012年に環境省が、九州のツキノワグマの絶滅宣言をしていますので、残念ながら九州では見ることが出来ないかもしれません。理由は、人間の開発による生息地の減少です。

 絶滅の危惧は、他の都道府県や新潟県でも同様に、生息地が年々と減っていくことで、クマに限らない動物たちは、生存危機にさらされています。

 ここまでくると、お気づきの方もいるかもしれません。

 クマなどの野生動物たちが市街地に出てくる理由は、生息地を追われ、食べ物を探し、生きていくために出てくるのです。未だ深い山や里があっても、温暖化や気候の変化によって育つはずであった草木の芽がでなかったり、未曾有の土砂災害による土壌の変化があり、山の中に本来の餌がなくなってしまっています。また、人間の餌付けやゴミを漁ることによって人間や食べ物に慣れてしまうことで、本来の生息地を変えざるを得ない状況になっているのです。

 人間が生息地を奪ったことで、動物たちに農作物を奪われる。なんと皮肉なことでしょうか。生きていくために行動するのは人間も同じことであって、野生動物だからダメだというのは、道理として通りません。

いないはずの動物が走り回っている

前項でも触れた野生動物たちの移動によって、下越地域で珍しいことが起こっています。胎内市周辺では、あまり目撃されていなかった鹿が数を増やし、農作物への影響がでたり、交通事故が発生するようになっています。

やはりここでも温暖化が原因の一つとされており、雪が少なくなったことで活動範囲が広がり、鹿が餌とする木の皮や芽を求め、北上してきていると言われています。移動するのはまた、生息地を追われて・・・の繰り返しで、大自然の負の連鎖とも言えます。

冬も全く気が抜けない”穴もたず”のクマ

 ツキノワグマやヒグマは、木の幹や洞穴を寝床に冬眠する動物ですが、昨今は状況が変わりつつあります。なんと、冬眠せずに活動するクマ達がいて、そんなクマ達を「穴もたず」と呼ぶのです。

 なぜ冬眠しないのか?

 そもそも冬眠の目的は、冬にはクマの餌もなく活動もできないため、秋までに栄養をふんだんに蓄えてから寝床で生命機能を落とし、じっと春の雪解けを待つためです。その間にクマは子育てもし、小グマに母乳を与え続けるため、考えるだけでもゾッとするほどエネルギーを消耗します。しかしながら、上述してきたように餌不足の栄養不足に陥り、冬眠すらままならず、さまよい続けるが故に、人里に出てきてしまうクマが後を絶たないのです。

 冬眠したくてもできないなんて、人間に置き換えてみれば、辛いを越して命にかかわりますね。クマも全く一緒で、生きるために必死。穴持たずのクマは、冬眠前のクマより狂暴化しますので、もし冬に出くわしてしまったら、非常に危険です。次項では、クマに出会った際に取るべき行動や、山に入るための事前準備について記述します。

クマに出くわす前にできること

 登山やハイキング、キャンプ、観光地ツアーなど、クマの暮らす山や森に入る機会は多くありますが、生息地に足を踏み入れるときは、入念な心構えと準備が必要となります。

生息地に入る前の心構え

  • 野生動物に出くわす可能性、リスクを考えておく
  • 出くわしてしまったときの対策方法やグッズを用意しておく
  • 観光であっても整髪料や香水などを控える
  • 絶対に餌付けしない
  • 写真撮影はもってのほか

出くわしてしまったら

  • 騒がず、刺激しない
  • 周囲の状況や地形を確認する
  • クマと目が合えば、そらさず、ゆっくりと後退する

それでも熊が近づいてきたり、攻撃されたときは、

  • ギリギリまで待ってから熊スプレーをかける
  • 棒状のもので目をつつく
  • 自分の首や頭を守る

携帯必需品

商品名価格販売先
熊よけスプレー2,000円〜15,000円前後ネット通販、ホームセンター
熊よけ鈴100円〜ネット通販、ホームセンター
100円〜ネット通販、ホームセンター
ラジオ1,000円〜ネット通販、ホームセンター
ストック ※登山などの場合3,000円〜ネット通販、スポーツショップ
救急セット1,000円〜ネット通販、ホームセンター

 一般的にツキノワグマは、とても臆病な性格であると言われており、人間の匂いや音に反応して遠ざかる場合があるので、山林に入る際は必ずラジオや鈴を持参しましょう。しかし、持っているからといって過信してはいけません。産後や子育て真っ只中、冬眠前、穴持たずの場合は特に、クマの警戒心や狂暴性が最大化しており、人身被害が多く発生します。そうでない時期であったとしても野生動物に絶対はありません。犬の数十倍の嗅覚を持っているので、数キロ離れていても人間の匂いや普段と異なる匂いに気づきます。クマから餌や敵として認識されれば、一溜まりもありません。あくまでラジオや鈴は、お守り程度に考えておきましょう。

 安心材料を付け加えるには、クマ対策スプレーが有効的です。アメリカのグリズリーに対応する性能まで必要ありませんが、5,000円から10,000円程度で噴射距離が長いものをおすすめします。なぜなら、クマ対策スプレーは、有効性の確保と風向きや天候に左右されないために、目の前まで近づくのを待ってから噴射しますが、距離が近ければ近いほど、噴射した後に直接攻撃を受けたり衝突するリスクが高まるからです。

 登山やハイキングで使用するストックも、いざという時に身を守ってくれます。クマは腕力が0.2トンから0.7トン程で鋭利な爪も持ち合わせているため、人間が素手などで対峙することは不可能です。ストックをお持ちでなかったとしても、ご自身の身長より少し低く硬い木でも構いませんので、登山やハイキングの際は必ず携行しましょう。いざというときは覚悟を決めて、武器を持って戦うしかありません。

終わりに

 温暖化や環境の変化に対して、EVや再生エネルギー、持続可能性などが謳われる昨今ですが、そこまで難しく考える必要はない気がしています。例えば、太陽光パネル設置のために山を切り開いたり、EV車のために廃棄できないバッテリーを製造していれば本末転倒、元も子もありません。人間が「環境という現状を見つめ、余分なことは求めない」。これだけでも環境は、元に戻らないまでも今より悪化することはないはずです。現状を見つめる、気付くということが、自然の中で人間と野生動物たちとが共生する一歩になるのではないでしょうか。